座学の前に、手を動かす。基本レシピと 11 ステップで一杯を完成させる。淹れたてのコーヒーを片手に、この先を読み進めましょう。
レシピは、驚くほどシンプルです。粉 15g、湯 240ml、湯温 90℃、60ml ずつ 4 回に分けて注ぐ。守るのはこれだけ。抽出時間は 2 分 30 秒ほど。
このレシピは、監修の坂本が試行錯誤を重ねて辿り着いた初心者向けの比率です。家のキッチンで誰でも・毎回同じ味を再現できることを最優先に設計した 1:16・90℃・4 投。プロのような派手なテクニックは要りません。
まずは 1 回目は動画を観るだけ、2 回目は動画を止めずにやってみる、3 回目からは自分のリズムで。
通しで観られる完全版。各 STEP のページでは、この動画の該当シーンだけを 3〜5 秒ループで埋め込んでいます。
コーヒーの淹れ方は、世界中に多様にあります。この講座では、その中でも最もオーソドックスなハンドドリップに絞って進めます。
家庭で最も普及していて続けやすい。道具は揃えやすく、場所もとらず、毎日でも淹れられます。
「変数の扱い方」が学べる。豆量・挽き目・湯温・注ぎ方 ── この 4 つをコントロールする技は、他のどの淹れ方にも応用できる土台になります。
豆の個性がもっとも素直に出る。ペーパーフィルターが油分と微粉を吸着し、豆の香り・酸味・甘み・後味が澄んで出てきます。
ハンドドリップペーパーで湯を通す◉ 本講座
エスプレッソ9 気圧・短時間、濃厚・クレマ
フレンチプレス粉を浸す、金属フィルター
サイフォン気圧差で湯が動く、視覚的
エアロプレス浸漬+加圧、短時間
コールドブリュー水で 8〜12h、まろやか科学的な観点では、淹れ方は大きく 透過法・浸漬法・加圧法の 3 つに分かれます。今回この教材で扱うハンドドリップは、透過法です。澄んだ仕上がりで、豆の個性がもっとも素直に出ます。
Filter透過法粉に湯を通過させる。紙が油分と微粉を吸着し、澄んだクリーンな仕上がり。
Immerse浸漬法粉を湯に浸す。油分も残り コク・厚み・再現性に優れる。
Pressure加圧法9 気圧で 20〜30 秒。短時間で濃く抽出され、成分が凝縮。
ドリッパーは素材で味が変わります。鍵は熱容量と熱伝導率。初めての 1 本は プラスチック製の HARIO V60が安定。
コーヒーは液体としてみれば約 99%(重量比)が水です。まずは軟水を用意しましょう。日本の水道水はほとんどが軟水なので、浄水器を通した水道水でも十分です。
ミネラルウォーターを使う場合は、ラベルに「軟水」と書かれた一般的なものを選べば OK です。硬水はミネラルが多く、苦味や重さが出やすいので、最初の一杯では避けましょう。
では、準備はOKですか?
豆・ドリッパー・フィルター・サーバー・スケール・ミル・ケトル・カップ。
軟水も用意できましたか?
ここから先は、実際に手を動かしていきます。
最初のハードルが、豆の量。1g の違いで抽出濃度は 1% 以上変動します。計量スプーンだけだと ±2〜3g のブレは普通。最初のうちは、しっかり量りで計量することを習慣にしましょう。
1 杯分の場合、豆の量は 15g。もし味が薄く感じたり、質感を重くさせたい場合は 0.5g〜1g 増やしても OK です。
Tip · 動画 0:08〜 一般的な計量スプーン山盛り 1 杯で約 12g、すり切りで約 10g が目安。ただし豆のサイズで大きくブレるので、スケール計量は習慣化を推奨。
豆を粉にするタイミングは、淹れる直前が鉄則。挽いた瞬間に表面積が数百倍に広がり、香り成分が爆発的に揮発し始めます。15 分放置で香りの 30% 以上が失われるという研究も。
ペーパードリップの標準は中細挽き〜中挽き。砂より少し粗く、グラニュー糖より細かいくらい。動画では自動ミルを使っていますが、手動ミルでも挽き目を調整できるものがあります。下にある画像を参考に挽いてみてください。何回かやり直しても OK です。
「中挽き」と言われても、最初はどの粗さが正解か分からない。粉の見た目で粒度を確認できる目安表です。
ザラメ糖ほど。フレンチプレス向き。
酸味・甘み・コクのバランスがとりやすく、軽やかに。
グラニュー糖ほど。もっとも標準的。◉ ペーパードリップ標準
サラサラ。ペーパードリップでコクを出したい時。
小麦粉に近い。エスプレッソ向け。
変数は 1 つずつ 挽き目・湯温・蒸らし時間 ── 複数を一度に変えると、何が効いたか分からなくなる。1 回の抽出で 1 つだけ動かすのが上達の近道。

理想の湯温は 90℃。沸騰させた湯をケトルに移し、1〜2 分そのまま置くだけで、ちょうどこの温度域に着地します。
高すぎる湯温(95℃〜)は苦味と雑味、低すぎる湯温(85℃以下)は成分が引き出されず薄く。湯温 1℃ の差で、味の印象が変わります。
ケトルは細口(グースネック)が断然使いやすい。湯の流量を指先でコントロールできます。
Tip · 湯温の目安 沸騰から少し待つだけで、湯温は自然に下がります。温度計がある場合は 90℃ を目安にしましょう。
円錐型のペーパーフィルターは、接着部を折って、ドリッパーの形に沿わせます。
折り終えたフィルターをドリッパーに入れたら、指で内側を軽く押さえ、円錐の面に沿わせる。ここが浮いていると、お湯が紙の外を伝って落ち(チャネリング)、味が薄まります。
セットしたフィルターに、湯をゆっくり回しかけて紙全体を濡らします。目的は 2 つ。① 紙の匂いを落とす、② ドリッパーとサーバーを予熱する。
注いだ湯はそのままサーバーに落とし、サーバーからカップに移し、カップも温めてから捨てます。一気に 3 カ所を温めると、抽出温度の安定が段違いに変わります。
温まったドリッパーに、挽きたての粉を投入。このとき、粉の表面を水平にならすのが意外なコツ。ドリッパーを軽く揺するか、指で縁を叩くと自然に平らに。
表面が斜めだと、注湯時に湯が低い方に流れてしまい、一部は過抽出、一部は未抽出という不均一な味に。
Tip · 動画 1:02〜 粉をドリッパーに入れたら、軽くトントンと 3 回ほど側面を叩く。これだけで表面が水平になり、抽出ムラが減ります。
準備完了。ここから、抽出。
量る・挽く・湯を沸かす・フィルターを折る・湯通し・粉をセット。6 つの準備が整いました。
スケール(はかり)とタイマー(スマホでOK)を手元に用意してください。ここからは 4 回に分けてお湯を注ぎます。
0:00〜0:35 — タイマースタートと同時に、60ml のお湯を粉全体に注ぎます。中心から外側へ。
注湯後すぐに、スプーンで粉を下から上に持ち上げるイメージで 3 回ほど攪拌します。「攪拌」とは、粉とお湯を均一に混ぜること。粉とお湯を均一に混ぜ、全粒から同時に抽出をスタートさせます。
0:35 まで — 35 秒ほど蒸らします。粉に含まれる CO₂ を逃がし、湯が粉全体に浸透しやすくするための時間です。0:35 になったら 2 投目へ進みます。モコモコと膨らむ泡は、焙煎から 1〜2 週間の新鮮な豆のサインです。(新鮮さと美味しさは比例しません)
Tip · 動画 1:30〜 攪拌は 2014 年頃から一部の有名バリスタが取り入れ、広がった技法。家庭で安定した味を出すなら「する派」が有利。
0:35〜1:05 — 蒸らしが終わったら、すぐ 2 投目。60ml を注ぎます。累計 120ml。次は 1:05 です。
ドリッパーの中心を起点に、「の」の字を描くように細く注ぎます。中心から外へ、また中心へ戻る連続した動きで、粉のドームを崩さず均一に。
1:05〜1:35 — 60ml を注ぎます。累計 180ml。ここからは味の中核部分。コーヒーの「コク」「甘み」「厚み」が出てくる時間帯です。次は 1:35 です。
Tip · 動画 2:21〜 1 投目は、酸味と香り。抽出初期は、酸味成分から溶け出します。2 投目は、甘みとボリューム。酸味の次に出る糖類やアミノ酸を溶かし出します。3 投目以降は、質感と余韻。全体の濃度を整え、重すぎない後味を設計します。
1:35〜2:30 — 最後の 4 投目。60ml を注ぎます。累計 240ml、最終目標に到達です。
最後の注ぎは乗せるようにやさしく。味の輪郭を整える役目。ここで過度に注ぎすぎると、後半の薄い成分が多く入り、味がぼやける原因に。
注ぎ終わったら、ドリッパーの中のお湯が自然に落ちきるのを待ちます。2 分 30 秒〜3 分の間に落ち切れば OK。何もせずに見守るのが正解です。
お湯が落ち切ったら、いよいよ仕上げ。意外とやることが多いのです。
① ドリッパーを外す ── 完全に落ち切ったら即。「最後の数滴を落とさない」派も正解。
② サーバー内の濃度差をならす ── 上が薄く下が濃い。スプーンで軽くかき混ぜるか、軽くゆする。
③ カップを予熱する ── 冷たいカップに注ぐと一口目の温度が 5〜8℃ 下がる。最初の湯通しのお湯で温めておくと、お湯も無駄になりません。
④ 香りを嗅ぐ ── カップを鼻に近づけ、立ち上る香りを 2〜3 秒。
⑤ 温度変化で味が変わる ── 例えば 65℃ では香り、55℃ で甘み、45℃ で酸。同じレシピでも、違った味に出会えます。